セン類の4亜綱 セン類の18目 科属種数 さくの開き方 さく歯 茎の伸び方と胞子体の位置 特徴
I ミズゴケ 1 ミズゴケ 1科1属35種 円形の蓋がはずれる なし は基物から立ち上がる。が出ないか、出ても稀。(タチヒダゴケ目の一部では茎が基物をはい、多くの枝が出る)。造卵器が茎の先端に形成されるため、胞子体は茎の先端に付く。 湿原の王者
II クロゴケ 2 クロゴケ 1科1属2種 さくが縦に4縦裂する 高山セン類の代表
III ナンジャモンジャゴケ 3 ナンジャモンジャゴケ 1科1属1種 さくが縦にらせん状に裂開する 名の如く、不思議なコケ。高山の冷涼な所に生育。
IV マゴケ 4 ヨツバゴケ          1科2属3種 円錐形の蓋がはずれる(なお、ツチゴケ目では蓋は形成されない) 特殊な形態になる(多細胞、多層からなる) さく歯が4本
5 キセルゴケ 1科3属12種 さくの形が特異
6 スギゴケ 1科6属29種 コケ庭の主役。
葉にラメラを持つ。
7 ホウオウゴケ 1科1属42種 一重になる(内さく歯だけをもつ。但し、ツチゴケ目ではさく歯が形成されない) 「鳳凰」の尾羽のような形になる
8 ツチゴケ 1科1属1種 土にうもれて、蓋もさく歯もない
9 シッポゴケ 5科38属121種 動物の尻尾ような形になる
10 センボンゴケ 3科32属99種 茎が密な固まりを作って生える
11 ギボウシゴケ 2科9属52種 乾いた岩上に黒い固まりを作る
12 ヒョウタンゴケ 4科12属21種 二重になる(内さく歯と外さく歯とを持つ。但し、ヒョウタンゴケ目では内さく歯と外さく歯が相対する。ヒカリゴケ目ではさく歯が形成されない。) さくの頚部が特異
13 ヒカリゴケ 1科1属1種 原糸体が光を反射して光る
14 ホンマゴケ 9科28属118種 「本当の真のコケ」と呼ばれる仲間
15 タチヒダゴケ 1科10属32種 さくに縦ひだができる
16 イヌマゴケ 12科45属98種 茎は基物をはう。枝は羽状に多く出ることが多い。造卵器、胞子体は茎の途中に付く。 ホンマゴケ類と異なり、茎が基物をはう
17 アブラゴケ 3科11属25種 油光りするコケ
18 シトネゴケ 12科107属341種 茎がからまって「褥(しとね)」を作る
コケの主な仲間 (rivised at Oct. 19, 2004)
   コケは、蘚類、タイ類、ツノゴケ類の3つの仲間に分けられている。では、その3つのそれぞれには、どんな仲間があるのだろうか。

   ここでは、「蘚類の分類上、こんな仲間がある」というのを、日本に生育するもので解説する。嬉しいことに、分類上の主な仲間の大部分は、日本にも生育している。
   
   ただし、「分類上の主な仲間」というのは、「形態的に他のものとは違う」という意味合いが強いので、「あちこちでよく見かける主な仲間」という訳ではない。そこんところは、ご自分で読み取って下さいませ。
     
蘚類の主な仲間 
 蘚類は、4亜綱に分けられる。
   4亜綱は、主に、胞子体の作り方の違いや胞子のう(さく)の開裂の仕方の違いによって分けられている。
   蘚類の大部分の種類は、マゴケ亜綱に属す。他の3亜綱(ミズゴケ、クロゴケ、ナンジャモンジャゴケ)は、極めて特異な形態・生態を持ち、種数も少ない。胞子体が付いていなくても容易に区別できる。

 マゴケ亜綱は、15目に分けられる。
   マゴケ亜綱は、基本的にさく歯の形態で分けられている。さらに、茎が立つか這うか、また胞子体が茎の先端に付くか途中に付くかなどの違いによって分けられている。その上、特異な形状の葉や葉身細胞を持つものは別目として分けられていて、1科1属(時に2−3属)のことが多い。

 マゴケ亜綱を理解するポイント
  @1科からなる7目は、いずれも形態的なまとまりがよく、わかり易い特徴的な形態をしている。図鑑でチェックしてみるといい。
   この7目の内、あちこちでよく見かけるのは、キセルゴケ、スギゴケ、ホウオウゴケ、タチヒダゴケの4目。他の3目(ヨツバゴケ、ツチゴケ、ヒカリゴケ)は、割に稀といってもいいと思う。

  @2科以上からなる8目の中で、シッポゴケ、センボンゴケ、ヒョウタンゴケの3目は、比較的、目としての形態的まとまりがよく理解し易い。葉の形や乾いた時に葉がどうなるかで、少し慣れると、これはシッポ、これはセンボン、ヒョウタンかな?と、野外で肉眼でみただけで何となくわかるようになる。
  
  @残りの5目は、目としての形態的まとまりが弱い。何故その目になるのか、初心者は理解するのが難しいかもしれない。ただし、ギボウシゴケ目とアブラゴケ目は、科数が少ない(2-3科)ので、目としてのまとまりが弱いとはいえ、どうにかなる。問題は残ったホンマゴケ目、イヌマゴケ目、シトネゴケ目の3目だ。
  問題の3目は、どうにもならないかといえば、そうでもない。「目」としての特徴を言葉で表現するのが難しい、というだけの話。これらは、科レベルでは、形態的特徴がはっきりしているものが多いから、要は、科ごとに覚えればいいだけの話だ。
  (ちなみに、これらは、いずれも、Bryum型さく歯(あるいはハイゴケ型と呼ぶこともある、内・外二重のさく歯)をもつか、その退化型さく歯をもつことに注意して欲しい)。
  この3目には、9科、12科、12科と、なんと33科がある。種数は、3目を合わせると、ナ、ナント、550種ほどもある。日本産蘚類の半数は、これらの3目のものなのだ。(ここんところを、すっきりと分類することができれば、蘚類も、タイ類のように、理解しやすくなるなるのでは?と思うのは私だけだろうか)
  多くの種数があるからといって、あきらめることはない。要は、各科や属の代表的種類(なるべくなら割とよく見かける種類がいいが)をきちんとわかるようにしておけば、他のものは、その種類に似ているものとして理解したり、区別することができる。
この表の分類は、岩月編(2001)「日本の野生植物 コケ」(平凡社)に基づいています。

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